小児科
感染症・様々な疾患
感染症
小児では感染症は最も多い疾患の1つです。気道感染症・消化器感染症をはじめとして広く感染症の診療を行っています。適切な検査を行うことにより適切な抗菌薬の投与が可能となります。耐性菌を増加させるような不必要な抗菌薬投与は行わないように努めています。マイコプラズマ感染に対しては擬陽性の多いlgM検査をやめ、抗原検査を行い診断するように変更しました。また症例により積極的にステロイド使用を行っています。意識障害を伴う中枢神経系感染症や、人工呼吸器管理が必要な重症肺炎等に対しては救急救命センターへ入院の上、スタッフ全員で対応します。
アレルギー疾患
当科が特に力を入れている分野の1つです。スタッフの多くが日本アレルギー学会の会員として活躍をしており、川尻医師は認定専門医になっています。また当院には小児アレルギーエデュケーターの資格看護師が2名おりチーム医療に貢献しています。岐阜県内で、小児アレルギーエデュケーターの資格をもつ看護師は他には岐阜大学にしかなく、非常に貴重な存在です。小児のアレルギー疾患は①気管支喘息、②アトピー性皮膚炎、③食物アレルギーが大きな柱になっています。
①気管支喘息
日本小児アレルギー学会のガイドラインに基づいて標準的な治療を行っています。治療のゴールとしては他の子と同じように運動ができることを目指しています。早期のステロイド吸引の導入、吸入器の貸出を行い、治療効果の改善・患者さんのQOLの改善を図っています。
②アトピー性皮膚炎
強い痒みを伴い、重症の場合には栄養障害を引き起こし発達に大きな影響を及ぼします。乳児期で体重が減少してくるような場合は要注意です。また発達障害様の症状や脳梗塞を来すこともあり適切な治療が重要です。患児の生活の質を高めること、順調な発達をすることが治療の目標です。ガイドラインに基づいた十分なステロイド剤・免疫抑制剤の使用を行っています。重症児に対しては入院により治療・指導を行っています。
③食物アレルギー
場合によりアナフィラキシーを起こし死に至ることのある疾患です。しかしながら乳児期からの食事制限は身体・精神運動発達に大きな悪影響を及ぼします。血液検査にとらわれることなく、十分な問診・負荷試験を行なうことにより原因食物の同定を行い、不必要な制限を行わないように努めています。また制限解除のための食物負荷試験や、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの診断のための運動負荷試験も積極的に行っています。
④多職種連携
アレルギー児については院内外の関係者との連携が欠かせません。院内においては医師のみならず小児アレルギーエデュケーター看護師による吸入指導、外用指導、日誌の説明や確認を行っており、コントロールが良くない児に対しては再チェックを行っています。吸入器の貸出・指導については臨床工学士が関与しています。食物制限に対し、栄養が不足することのないように代替食の指導を栄養士が行っています。
循環器疾患
当科においては毎日外来で超音波検査を行えるようにしています。当院スタッフの外来では、学校心電図健診で異常を指摘された児や、心雑音・不整脈のある児の初期診断・管理、手術の必要の無い軽症の先天性心疾患や川崎病後のフォローを行っています。当院ではホルター心電図(24時間心電図)・トレッドミル運動負荷心電図・肺血流シンチ等の検査が可能です。
毎月第3木曜日には岐阜県総合医療センター小児循環器内科の専門医(奇数月は桑原先生、偶数月は高山市出身の面家先生)に来ていただいて、手術や投薬などの治療が必要な先天性心疾患、複雑な不整脈などの児を診ていただいています。手術が必要な場合には岐阜県総合医療センターへ紹介し、その後の長期フォローを当院で行っています。
呼吸器疾患
呼吸器感染症・気管支喘息等で人工呼吸器管理を必要とする患者さんも引き受けています。気管支異物の治療は当院ではできませんので岐阜大学や富山大学の方へお願いしています。気胸については当院呼吸器科との協力のもとに治療させていただいています。在宅人工呼吸器管理が必要な児も診療しております。
神経疾患
てんかんをはじめとして運動発達遅延、脳性麻痺その他広く小児神経疾患の診断・治療・フォローをリハビリ科医師・療法士と協力のもとに行っています。小児性発症のてんかんでは良性のものもありますが難治性のものも少なくなく、義務教育終了後も患者さんの希望に応じて長くみさせていただいています。医学的な判断のみならず、進学・就職・運転免許取得等社会的な視点から治療を行っています。女性の患者さんについては結婚・妊娠・母乳育児に備えての治療方針を考えさせていただいており、内服が必要な患者さんでも安全な投薬・授乳が行えるように援助を行っています。筋肉のつっぱりなど上下肢痙縮・脳性麻痺の尖足に対するボツリヌス毒素(ボトックス)筋注療法を行っています。また脳神経外科との共同によりバクロフェン髄注療法(ITB療法)も可能になりました。ITB療法とボツリヌス毒素筋注療法の併用により、脳性麻痺・脳卒中後等の痙性麻痺を呈する患者さんの運動を向上させることができます。
精神・発達障害
不登校・神経性食思不振症・反抗挑戦性障害・心身症などに対応しています。発達障害のある児は小学校入学以降二次障害を引き起こすことがあり臨床心理士とともにその対応を行っています。ほか軽度のうつ病(希死念慮のないもの)・パニック障害などで過換気を来す方・社会不安障害・緘黙症などについても可能な範囲で対応しています。
第3以外の木曜日午後2時・3時枠で、飛騨地域の発達専門外来を行っています。自閉性障害(広汎性発達障害)・注意欠陥多動性障害・学習障害(読字障害・書字障害・計算障害)など発達障害の診断・相談・治療を行っています。診断においては発達検査・各種心理学的検査を行い総合的に行っています。治療的には面接、臨床心理士・精神福祉士による心理カウンセリングおよびSST、向精神薬の内服等を組み合わせて行っています。文字(ひらがな・カタカナ・漢字)を読んだり書いたりすることが苦手な方、計算が苦手な方に対する診断・援助も準備しております。
内分泌・代謝疾患
主として甲状腺疾患・下垂体疾患(成長ホルモン分泌不全性低身長など)・副腎疾患等を診ています。新生児代謝スクリーニングで発見された高TSH血症に関しては、その日のうちに診断・投薬開始が可能です。3歳以降に超音波検査やTRH負荷試験等を行い、病型診断を行います。一過性高TSH血症と診断された児の中には軽度の甲状腺機能低下症の方が含まれており、必要に応じてTRH負荷試験を行っています。
低身長は自信のなさやいじめにつながり、精神的にも問題を来すことがあります。外来で問診・診察・血液検査・手根骨Xpを行い、必要な場合、入院にて成長ホルモン分泌負荷試験を行っています。年少時に成長ホルモン分泌が保たれていても大きくなって不十分である例も見かけます。また特に成長曲線から外れてくるような児や思春期の早いような児は要注意です。
糖尿病については内科の協力のもと、診断・治療を行っています。毎年夏には富山の糖尿病サマーキャンプに医師・看護師共に参加しています。 先天代謝異常症についても診断・治療を行っています。
腎・泌尿器科疾患
学校検尿で異常を指摘された方、急性糸球体腎炎・ネフローゼ症候群等の原発性糸球体疾患、尿路感染症の診断・治療を行っています。当院では腎生検ができない為必要な場合は他院に依頼しています。入院の長くなりそうな児に対しては飛騨特別支援学校日赤分校に通学しながら治療を行っています。
夜尿症は当科の力の入れている疾患の1つです。原因としては尿濃縮力の未熟性や膀胱機能の未熟性がありますが、二分脊椎や発達障害などが潜んでいることもあります。これらを念頭に置いて、病型診断を行ったうえで治療を行っています。すぐに治るものではない為年単位で考え、「起こさず、あせらず、怒らず」をモットーにして治療を行っています。本人やご家族に治療意欲がない場合は治療効果が期待できません。
血液疾患など
貧血・紫斑病(血小板減少性紫斑病・血管性紫斑病)・血友病等の診断・治療を行っています。血管性紫斑病に対しては、関節や下肢の疼痛の強い場合、腹痛や血便のある場合、腎障害のある場合に入院していただいています。血小板減少性紫斑病では第一選択として免疫グロブリン点滴静注を行いその反応性をみて、骨髄検査・ステロイド投与を考慮しています。白血病や悪性リンパ腫・小児がんについて入院治療は高次施設にお願いしていますが、外来フォローは共同して行うことがあります。