当院のがん診療に係るチーム体制
近年の高齢化社会を反映して、がんは現在わが国の疾病別死因の第1位を占めており、一生の間に2人に1人は何らかの がんを発症するといわれております。それ故、がん診療の充実と向上を図ることは急務であり、厚労省は平成14年から全国各地にがん診療連携拠点病院を指定し、拠点病院を中心にその地域のレベルアップを目指しております。飛騨地域の基幹病院である当院も平成17年1月に地域がん診療連携拠点病院に指定されました。それを機会に、当院のがん診療体制を見直し、各科専門医・薬剤師・看護師・栄養士・MSW・精神保健福祉士・診療情報管理士といった多職種のチーム医療体制を発足させましたので、当院におけるがん診療の実情と合わせて紹介させていただきます。
がん検診
当院の健診センターを中心に、人間ドックの充実を図り、がんの早期発見に力を入れています。
がんの診断
当院は、来年度までにより一層の画像診断レベルの向上を図るために、最新のMDCT2台とMRを1台導入、血管造影装置・透視装置を更新します。従いましてCTは2台、MR1台、血管造影装置が2台となり、より迅速かつ精密な診断と治療が可能となります。また最新のデジタル乳房撮影装置も設置されており、今後精度管理委員会の認定を受ける予定です。
がんの治療
従来、当院では胃がん、大腸がん、食道がん、膵がん、肝がん、胆道がん、肺がんは消化器科、呼吸器科、放射線科、外科の合同カンファレンス(週1回)で治療方針を決定しておりましたが、再発した時の化学療法・緩和対策等に関してまでは、検討できていないのが現状でした。そこで今回、呼吸器科・消化器科・放射線科・外科の医師及び看護師、薬剤師で構成される化学療法チームを立ち上げ、そこで各がん診療ガイドラインに沿った化学療法のレジメン(通称ケモ箋)を作成しました。各主治医は予めケモ箋を病棟薬剤師に提出し、チェックをうけた上で化学療法が開始されます。また抗がん剤の副作用の説明などは病棟薬剤師が行う体制となっています。ケモ箋は薬剤部で集積され、化学療法チームで検討されます。 また、緩和ケアチームも今回緩和ケア認定看護師の登場を機に立ち上げました。緩和医療に関心のある内科・外科・心療内科の医師、看護師、薬剤師、精神保健福祉士、MSW、訪問看護師からなるチームです。ターミナルケアで問題となる患者さんに対し、主治医・看護師の依頼をうけ、チームとして対処しています。月1回のチームカンファレンスと適宜の集まりで問題の解決にあたっています。疼痛管理マニュアル、鎮静療法マニュアル、持続皮下注マニュアルを作成しました。訪問看護師が加わり、在宅でのターミナルケアにも取り組んでいます。またがん相談窓口にもなっています。 がん治療をバックアップする体制の一貫として、以前より活動して実績をあげている当院のNST(栄養サポートチーム)に、低栄養にあるがん患者の術前・術後の栄養状態の評価と管理を依頼する体制を整えました。
がん登録
いままで岐阜県のがん登録に協力してきましたが、今回の認定を機会に新たに病理医・内科医・放射線科医・診療情報管理士からなるチームを立ち上げ、当院で扱ったすべてのがんの登録を行うようになりました。ここでデータの集積・解析がなされ、がん診療の向上に寄与することが期待されます。
地域・国のがん対策の立案・評価のために、地域がん登録(岐阜県がん登録)への情報提供、国立がん研究センターがん対策情報センターへの情報提供を行っております。登録されている情報は個人情報も含まれておりますので、当院の個人情報保護規定を遵守し、最大限の注意を払って取り扱っております。